いうまでもなく、
武満の青春時代は、 惨たらしい戦争と死の危険が常に付いてまわっていた。 かくのごとくして、 混沌の渦中にあった日本から西洋音楽を激しく渇求し、 翻って日本文化の本質を相対化させた往来のプロセスから、 音楽文化の差異・ 関係を直交に結いあわせた紐のように協同と対峙とが干渉しあう、 肥沃な大地を培えた。
楽譜に留まらずその著書からも、音が聴こえるような、 音を誘い出すような「沸騰する交渉」に、 ...
2019.06.20 17:02:44 - コメント
いうまでもなく、
ある朝、上野悠河がなにか気がかりな夢から目をさますと、自分が寝床の中で一台のレコードプレーヤーに変っているのを発見した。彼は鎧のように堅いキャビネットを天井に向けて、正しく横たわっていた。頭をすこし持ち上げると、正確に33と1/3rpmの速度で回転するターンテーブルが見える。中心のとんがっているところにかかっているスタビライザーはいまにもずり落ちそうになっていた。「Marantz」の文字が自分が眼の前にぴっかりと光っていた。ふだんの着飾らないファッションにくらべて、大袈裟なくらい仰々しい鉄板にそれは大きく刻まれていた。
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仮にぼくが「レコードプレーヤー」として、過去のある地点で回転を続けていたら...