わたしの友に捧ぐ。
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わたしはゴロワーズ・カポラルをたしなみながら、たいへん広大な田園風景を背にしてローカル線に揺られている。それは──少なくとも、わたしの住むタリンの、マロニエ街並木通りの南50キロメートル先を走る、雄大にも程があろう平原の単線鉄道とくらべてしまえば──質素となりかねない小さな山の大きな谷をゆく「207号」という一両編成のディーゼル車、かれは可もなく不可もない鼓動をもって、しかし有機的に前進を続けていた。
日本、この極東の──地図上では──細く長い島に、わたしは長らく先入観を植えつけられていたのかもしれない。したがって旅に出でるまえに、歴史については厭になるほど身をもって...
2020.09.07 04:20:46 - コメント